俺達のコラム

 このページは、ベイタウン在住の翻訳家でもあり、シャンソン歌手でもあるPretty Ladyさんが執筆した「ときめき」というタイトルのメールを集めたものです。


ときめき(その23) 「最も遵守される国際基準、そして"育ちの良い"青年達

国際会計基準、資金決済の国際基準、国際品質基準、とにかく国際基準と名がつくものの数は万とあるのではないだろうか。好奇心でGoogleに入れてみると、カイロプラクティックの国際基準というものもあるらしい。しかし、あらゆる国際基準の中でサッカーほど浸透し遵守されている国際基準は無いだろう。この地球の遠隔地にある小さな国にも、超先進国の基準と全く同じ基準で競技が行われ、勝ち負けが決まる。

感動の舞台が再び開幕した。自国のチームがテレビ画面に移されるときは、この世界のあらゆるところで、興奮の叫びが広がっているのだろう。興奮と歓喜と失意の涙が織り成す4年に1回の国を挙げてのゲーム。ファン暦はまだ浅い私だが、ワールドカップの意義の深さを思っては、ただただ脱帽する。

各国代表チームが出来るだけ同じ土俵で戦えるようにするためか、選手達は他国のプロチームでプレイし、そこで優れた他国の選手から学び、また交戦しながら4年の訓練を積み上げ、自国を代表するチームに加わりワールドカップに参加する。ワールドカップでは敵陣にいても、それまでは同じプロチームの仲間。彼らの間に人種を超え国籍を超えた「友情」溢れる思いやりがプレイの到るところに見える。倒れた"敵"を労わり、試合終了後負けても勝っても相手をねぎらう姿が、全て見通そうとするテレビ画面の前にいる視聴者の眼に焼きつく。

ファンが期待するのは、もちろん勝ってくれることだ。歴然と見える技術の差にも、「奇跡」が起きて欲しいと願う。日韓共同ワールドカップの時の韓国チームのように。何が奇跡を呼ぶのか。おそらく「絶対勝つ」と言う言葉面ではない魂だ。

今回決勝トーナメントに上がった国のチームは、全て予想外ではない(オーストラリアは例外かもしれないが)。アジア陣は全て敗退した。韓国チームが勝ち点1点差で、決勝トーナメントへの進出を逃した無念さは残るが、誰もこのチームに悶着はつけないだろう。「彼らは一生懸命やってくれたから」(韓国サポータのインタビュー)

しかし、日本は?オーストラリア戦の開幕をドキドキしながら待っていたファンに取って、後半戦の最初の失点から続く3失点。あの失点は決して避けられない失点ではなかった。GKの川口が余りに素晴らしい自分のパフォーマンスに自制心を失い調子に乗った?それが引き金になり、透きだらけになった?布陣が守り中心だったから?なぜ、なぜ同じ事を繰り返すのか。4年前のトルコ戦で負けた時の日本チームが蘇った。あの時の精気の無さも。

オーストラリア戦の日本チームのパフォーマンスに無念さより再び4年前と同じように憤怒に似た感情を抱き、溺れた人間が脆くとも求める細い手綱のように、クロアチア戦を観戦する。日本、頑張ってくれた。そしてブラジル戦。。。技術に眼に見える差があるのだから仕方が無い。でも中田秀が言うように、「勝てるゲームを落とした」事の無念さが、やはりファンとして日本チーム対して残る。

決勝トーナメントに強豪アルゼンチンに敗れたメキシコ。負けもとで、自由にプレイし、最高のゲームだったと選手が笑顔で告げる。そう、良いゲームなら負けても良い。追いついていないものは追いつけない。しかし自分の今ある力を出し切れない、出していない事がファンを失望させる。その原因を分析しその呪縛から抜け出して欲しい。

日本のチームには大きな特徴があった。「育ちの良い」青年達。先生の言うことをよく聴き、乱暴なことはしない、大胆なこともしない。小さくまとまった「育ちの良い」青年達。良くも悪くも日本社会を映し出している。

今回の日本チームのプレイを見ながら、私は自分自身をも叱咤した。自制心を失ってはならない。あの一発が「育ちの良い」青年達を敗退へ導いたトリガーになってしまったのだから。


Pretty Lady (2006/6/26)



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