ジミーさんたまには電話して!

2002年秋に引退コンサートを考えていて、2002年の5月にはプレ引退コンサートを幕張で開催する予定だったジミーは脳梗塞で倒れた。
しかし奇跡はたくさん続く。その後、一旦回復し、再びファンの前でドラムを叩く。そしてまた倒れる。もう駄目だと思っても三度復活した。2005年6月(75歳)にはドラマー60周年記念イベントを開催し、なんとドラムを叩いた。


右は60周年記念イベントでドラムを叩くジミー竹内。
(ヘッドギアは、急に倒れたりしたときに頭を保護するもの)
2008年9月。このシリーズを書き始めてから6年も経ってしまった。あれから何度かジミーの家に行ったり、また華やかに開催された2005年の「60周年記念イベント」では不肖私目が司会を仰せつかったりと、なんだかんだとジミーと会ったりしていた。しかし、60周年イベント辺りから、どうもジミーの調子が芳しくない。その半年後くらいまでは病院の公衆電話から私の電話番号の書いたメモを頼りに私宛に電話を掛けてきてくれたが、正直何を言ってるんだかわからない状態だった。でも、たまにしっかりとした口調で、「シバちゃん、幕張に行きたいよ。」と言った。

その後、電話の回数は極端に減った。たまに掛かってくる電話の内容は、「シバちゃんは写真がうまいね。あれ、僕の家に飾ってあるよ。」ということを何度も繰り返していた。「本当はね。僕はニューヨークに行かなくてはならないんだよ。ニューヨークでライブをやってくれと言われてるんだ。」というようなことも言っていた。かと思えば、「もう電話できないよ。シバちゃんの電話番号が書いてある紙を無くしちゃったんだよ。それで看護婦の奴が僕から紙を取上げて、もう電話しちゃ駄目だっていうんだよ。」と搾り出すような低い声で唸ったりした。

確かその電話が本当に最後だった。(*注)その後、近所に住むジミーさんの友人のNさんを介してもジミーさんとも、ジミーさんのご家族とも連絡が取れなくなってしまった。Nさんがジミーと私に気遣いながら申し訳無さそうに、それらの理由を語った。どうも、今、ジミーは話が出来る状態ではないようだ。それに相当ご家族に負担がかかっているようだ。

(*)ひょっとすると、ジミーの家に行って、直接話したのが最後だったかもしれない。その辺りは私もおぼろげ。


私の許に、ジミーのお弟子さんだっという女性から「どうしてもジミーさんと会って話しがしたい。いや、会えなくとも電話で話をするだけでもいい。」というメールを貰った。また、往年のジミーファンの男性から、家の前まで行ってみたいので住所を教えてほしいという内容の電話を貰った。いずれも、Nさんに相談してみたが、無理だという。もちろん私もここ数年(約2年)は訪れていない。いったいジミーはどうなっちゃったんだろう。微かな記憶の中のほんのひとかけらでも私のことを覚えてくれているだろうか。

昨夜、Chinclockさんからメールを貰った。YOUTUBEにアップしてある貴重なジミー竹内の音を聴かせてくださった。1963年のシャープ&フラッツの音だそうだ。以下。

http://jp.youtube.com/watch?v=mbcmRfA7s6w

感動のひと言。やっぱ、凄いドラマーだ。日本のトップクラスだと改めて思った。

実は、ジミーの家に未発表の音源があることを私は知っている。ラジカセで聴かせてもらったことがある。凄い迫力でドラムを叩きまくっている。クオリティも高い。1980年代の初め頃、スタジオ録音したもので、アルバムとして発表する予定だったらしいが、何かの都合で駄目になってしまったものだ。きっとその頃ってお洒落なフュージョン系がジャズの主流になっていたので、古臭いジミーのリーダーアルバムは売れないとレコード会社が判断したのかもしれない。今となってはあの音源がどこにあるのかも、おそらく誰もわからなくなってしまっているだろう。残念だ。

時々妻が、「すっかりジミーさんから電話が無くなったね。」と寂しそうに言う。多いときでは毎日のように電話を掛けてきてくれていた。電話の冒頭では必ず面白おかしい洒落たジョークで、取次ぎに出た妻を笑わせてくれた。私の息子には「新しい奥さんですか?」と言ってた。そんな頃が懐かしい。考えてみりゃ私たちの結婚式でジミーはドラムを叩いてくれたのだ。凄く名誉なことだ。日本の誇る偉大なドラマー・ジミー竹内。そんな大人物と知り合えたことをいつも感謝している。有難うジミー。そして、微かな記憶の淵で彼はきっと今でも凄まじいドラムを叩いているのだろうと私は思っている。

(終わり 2008/9/5)



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ジミー竹内ドラム人生60周年記念イベント(2005年)



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