俺達のコラム
ロックで遊んでいるお父さんは好きですか?


「ロックコアが終わって・・・」より

ひと昔前に「働いているお父さんが好きですか?遊んでいるお父さんが好きですか?」というCMがあった。あれは確かサントリーのウイスキーのCMでさすがに一流どころの制作会社が作っただけあって、コピーがズシンと響いてくる。汗みどろになって働いているお父さんは「かっこいい」という内容の忌野清四郎の歌もテレビで流れていた。「昼間のパパはいい汗かいてる」という詞が耳に残っている。どちらにしろ、家庭内での父親の復権を訴えているのだろうが、どうも「働くこと」を助長し、「遊ぶこと」はかっこよくない、ような印象を受けてしまう。

ロックをやっているお父さんたちはまさに遊んでいるわけなのだが、なにかとんでもないことをしてるように見られがちだ。おそらく奥様方の井戸端会議でも、自分の亭主が休日にゴルフではなくロックをやっている、ということを口から出すことをためらう方もいらっしゃるだろう。なんでだろう。ゴルフや麻雀は接待、つまり会社の仕事の延長というイメージもあるから一般的な趣味として定着しているのだろうか。それともゴルフは上流階級的な響きがあり、ロックは貧乏臭いというイメージがあるのだろうか。まあ、ロックをやっていることで会社から給料にプラスアルファがあったなどと聞いたことがないし、仕方ないのかもしれない。

ロックおやじとて、普段は上司から怒られ、部下に馬鹿にされ、泥沼のような長時間の会議に、突然の出張に、心も体もボロボロになっているのである。まあ、とにかく寸暇をロックに費やしているだけなのに、「今日は○○部長とゴルフなんだ」と言えば爽やかに送り出してくれる奥方様でも、「今日はバンドでスタジオ入るよ。」というといい顔はしない。それは我が家だけではあるまい。どうもバンド遊びをやっているお父さんは家では肩身が狭いようである。

世の中絶対にゴルフおやじよりもロックおやじのほうが暮らし難い。上司と会話してる時に、「いや〜、昨日はゴルフでして・・・、とにかくボロボロ。OBは出るわ・・・。」と切り出せば、円満なコミュニケーションが図れるのだが、迂闊にスタジオで3時間も練習したなどと言っては失笑を招くだけである。困ったものだ。ところがJAZZをやっている、と言うだけで、少し尊敬してくれる者もいる。これも不思議なことだが、否定はできない。うーむ。ロックおやじに明るい未来は無いのだろうか。

しかし、ここで敢えて言いたい。「ロックで遊んでいるお父さんはかっこいい!」のである。そりゃ働いているお父さんも捨てたものではないが、どうも働くということには色々とかっこ悪いことがついてまわっている。営業ならば客にぺこぺこと頭下げているのを子どもにはあまり見せたくないし、技術系でも真っ赤な目をして髪の毛を掻き毟りながらパソコンの画面に向かっている様は決して美しくはない。それに常にヒエラルキーを意識した会話が飛び交っている会社は非常にかっこ悪いのである。かっこ悪いことが本当は非常にかっこいいんだ、ということが分かってくれるようになるまではあまり見せたくはない。

それより、スポットライトを浴びて、でかいボリュームでギターをガンガン鳴らしているお父さんは、普段のお父さんではないのだ。本人とて、ギターを弾いているときはジミーページやジェフベックになりきっているのだ。それはまさに「どうだ、お母さんに文句ばかり言われているお父さんとは別人のようだろ?」と言っているかのようだ。ロックおやじの奏でるフレーズを注意深く聴いてみるが良い。「どうだ。どうだ。」と聴こえてくるから不思議だ。

よく男の子は父の背中を見て育つという。確かにそういうものかもしれない。ゴルフおやじの倅は確実にゴルフ好きになるし、テニスおやじの息子もテニスが好きになっている。ピアノが得意な父親を持つ子どもはやはり無理やりでもピアノを習っていて、しかも非常にうまかったりする。私のおやじ(故人)は飲むことと釣りが大好きだった。それはしっかりと受け継いでいる。そういうことからしても、ロックおやじの息子はロックが好きになるのか?それはどうだか分からないが、少なくともロックの楽しさくらいは教えるべきだ。ロックをやっているときのお父さんは「非常にかっこいい」と思わせなくてはならない。「ロックはかっこよくて、それでとても楽しいんだよ。」と息子に教えてやろう。

ロックの良さ、かっこよさは受け止め方で色々だし、強要もできないので、せめて「お父さんは遊んでいてずるい!」とか、「羨ましい!」とか「楽しそう!」とか言っもらえるようになろう。遊んでいる、つまり仲間と楽しくロックをやっているお父さんの背中を堂々と見せてやろう。案外子どもは遊んでいるお父さんが好きなのである。難しい顔をして仕事の電話をしているお父さんより、キラキラした目でギターを弾いているお父さんのほうが絶対に好きなのだ。そして、一生懸命勉強して、一生懸命働いてこそ50歳が近づいて尚ロックで遊べるんだということを教えてやろうじゃないか!!

(2005.2.22 Zaki)


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