たけし軍団とオフィス北野の森昌行社長の間で手打ちが成立したようだ。5日、ガダルカナル・タカが森社長に「声明文は森社長と対立することが目的ではない。騒動のエスカレートは望んではいない」などと電話したところ、森社長もきょう、事務所の新体制構築に向けて、話し合いに応じることを表明した。
森社長をあれだけ"裏切り者"よばわりして告発しておきながら何を今さら、という感じもするが、しかし、一方で、たけし軍団がこのタイミングで手打ちをしたがったというのもわからなくはない。
前回の記事でも指摘したが、そもそも、森社長を告発するあの声明文は軍団が自発的に書いたものでなく、たけしに書かされたものだった。
周知のように、愛人に狂ったたけしは彼女に自分の稼ぎや財産を渡すために独立。ところが、そのことを「週刊新潮」(新潮社)などに暴露され、「洗脳状態」などと書かれたため、それを打ち消そうと、軍団を使って"独立は森社長の裏切りへの不満だった"というストーリーを流させたのだ。
軍団の声明文が大きな話題になった直後、軍団メンバーと親しい芸能関係者が、本サイトの取材にこう語っていた。
「メンバーから直接、聞いたんですが、あの声明文の中身は、たけしさんにメモを手渡されて、それにもとづいて書いたみたいですよ。軍団のなかには、もともと、後からやってきて事務所の幹部におさまった森社長に対して反感があったようですが、あそこまでの憎悪感情はなかった。株のことなんかもまったく知らなかったらしいです。でも、たけしさんに森社長をこらしめろといわれて、断れなかったらしい。このまま、軍団が森社長と対立関係になって、行き場をなくしてしまったら、本当にかわいそうです」
実際、軍団は一時、本当に行き場をなくしかけていた。まず、軍団はたけしの新事務所「T.Nゴン」には絶対に入れない。というか、そもそも軍団がオフィス北野に残ることになったのは、たけしに新事務所に連れて行ってもらえなかったからだ。たけしは、一昨日の『新・情報7days ニュースキャスター』(TBS)で「軍団が出てしまったら会社が潰れちゃうかから残した」「(オフィス北野が正常になったらたけしの新事務所に合流すると)約束している」などと語っていたが、これは自分のイメージダウンを避けるために適当なでまかせを口にしたにすぎない。実際は、長年たけしを支え、「フライデー」事件では刑事犯罪に問われる行動までともにした軍団は、愛人のツルの一声であっさりと捨てられてしまっていた。
そういう意味では、軍団には最初から、森社長とうまくやっていくしか選択肢はなかったのだが、自分の金を一銭も払いたくないたけしに「森の株を分け与える」とそそのかされた彼らは、森社長を追い出し、自分たちがオフィス北野の経営権を握れると錯覚。森社長を「裏切り者」よばわりする声明文まで書いたことで、森社長から怒りの反撃を受けてしまう。「週刊新潮」では森社長から「もういっしょにはやっていけない」という宣告を受け、法的手段までちらつかされてしまった。
おそらく、軍団はこれを読んで、自分たちの置かれている状況をはじめて悟ったはずだ。おそらくほとんどのメンバーが手打ちを望んだのではないだろうか。
だが、森社長との手打ちを望んだのは、たけしも同様だった。それどころか、この手打ちは、たけしが軍団に命じたと言う話もある。
たしかに「週刊新潮」に載った森社長の反論は、たけしにも十分な恐怖を与えたはずだ。前回の記事でも指摘したように、たけしには、右翼団体との仲裁のかわりに、東通をオフィス北野の大株主にしたり、暴力団の関係者との交友など、やばい話が山ほどある。以前の支配関係の延長線上で、森社長は何をやっても逆らってこないとタカをくくっていたが、森社長をこれ以上追いつめたら、こうしたネタを暴露されて、もっと決定的なダメージを受けるかもしれない。たけしはそんな危機感を抱いて、慌てて手打ちを後押しし始めたのではないか。
もちろん、この手打ちは森社長にとっても歓迎すべき話だった。前述したように森社長にはたけしに対する逆襲のネタはいくらでもあるが、そうした行動に出るためにはすべてをなくす覚悟が必要になる。森社長にしても、せっかくテレビ制作会社の一社員から芸能プロダクションの代表取締役にまでなったのに、そんなメリットのないことはしたくなかっただろう。
しかし、騒動を振り返ると、改めて呆れるのがたけしの小狡さだ。たけしは前述した『新・情報7days』で冒頭、この騒動について「こじれちゃって、今度軍団と社長との喧嘩になっちゃって。俺、全然部外者になっちゃって」と語っていたが、よく言うよ、である。自分の愛人問題を隠すために軍団を使って「軍団VS森社長」に話をすりかえたのは、たけし自身ではないか。しかも、軍団と森社長がボロボロになる一方で、この作戦はまんまと成功して、テレビではたけしの愛人問題に触れることは完全にタブーになってしまった。
たけしの映画『アウトレイジ』シリーズでは、暴力団組長らが「親分子分」の関係をたてに、末端の組員をいいように利用した挙句、ボロ雑巾のように捨ててしまうエピソードがしばしば出てくるが、今回のたけしの姿は『アウトレイジ』のグロテスクな暴力団組長そのものといっていいだろう。
ただし、たけしがこれで逃げ切れるとはかぎらない。実は、ここにきて、たけしの実娘で元タレントの北野井子が週刊誌の取材に応じ、たけしとその愛人を告発したという情報が流れているのだ。ほかにも怒り心頭の幹子夫人にも同様の動きが噂されているし、長男もツイッターで〈どんどんダサくなってく人を見るのはきつい〉とたけしのことを示唆するような意味深な投稿をしている。これからたけしには、家族からの告発ラッシュ、家族と愛人の骨肉の争いが待ち受けている可能性もあるのだ。
いずれにしても、たけしがまだまだこれから、晩節を汚し続けることだけは間違いないだろう。
(田部祥太) |