最近、駅のホームの立ち食いそばが段々少なくなってきた。特に階段の下の僅かなスペースにある立ち食いそば。かつてはそんな店がたくさんあった。今回はたまたま行った上野のホームで見つけた。見つけたという表現は決してオーバーではない。本当に少なくなってしまったのだ。上の写真はかつての東北本線の発着ホームの立ち食いそば屋。東北の人が上京して初めて踏む東京の地である。今や宇都宮線と高崎線のホームとなった為に雰囲気はまったく変わっている。自販機の導入は新しいけれど、電車に乗る直前にひいひいしながらそばをかきこんでいた頃が懐かしい。
そういえば、今はホームの弁当売りも無くなってしまったのだ。
ひょっとするとこういったホームのそば屋は上野の他のホームにもあるかもしれない。私が探した限りはここだけだった。あと、ホームから出口に向かうコンコースに大きなそば屋があった。そこは立ち食いそば屋ではなくて本格的なそばで、立ち食いそば紀行の範疇ではない。第一お洒落だったし。
品川や大宮の駅とかの大きなターミナル駅にもホームの立ち食いそばはだいたい必ずあったのだが、今はどうなんだろう。サンドウィッチとかハンバーガーの店にとって変わったのだろうか。
2009.12.16
生そば処(上野駅宇都宮線ホーム)
スペースが小さいので、5人並ぶといっぱいいっぱいのカウンター。そしてカウンターはステンレスという昔っぽいつくり。おじちゃんとおばちゃんの二人でやっている。店名は不明。「生そば処」としか書いてなくて、脇の壁にあったパート募集の連絡先も単に「生そば処」と書いてあったので、それが店名かもしれない。
春菊そば400円を食べた。春菊そばで400円という価格は決して安くはない。ホームにあることの地代が高いのだろうか。ま、でも、せいぜい10円くらいの差だ。だいたい天ぷらそばは380円や390円くらいが相場。400円を越えるとぐっと高くなったような錯覚はある。
見た目は右の通り。つゆはやや薄い色をしているがすすってみると結構しっかりとした味がある。しかも、物凄くアツアツだ。春菊の天ぷらはサクサク。徐々にジューシーになってゆく過程も旨い。麺は中くらいからやや細めくらい。更科っぽい色合い。コシもちゃんとしているし、店名にあるように本当に生めんを使っているようだ。接客もいいし、気に入った。
別途容器代を払えば電車の中にも持ち込めるらしい。でも、電車の中でそばを食べている人って見たことがないな。
| | | | | 左: | 始発駅なので、こうやって電車が停車しているときに、ドアから暖簾が見えると、もうたまらないのだ。もちろん、かつおだしのいい香りも漂ってくる。 | | | | | | | 中: | ホームの端っこには「ふるさとの訛りなつかし・・・・」という石川啄木の碑がある。ただ、この碑の形状はあまり好きじゃないな。どちかっていえば。 | | | | | | | 右: | この銅像は結構有名。最近あまり登場しないけれど以前は時々テレビに出ていた。 |
湾岸そば
(JR新木場駅構内) ベイタウン住民は新木場で乗り換える人が多いから、ご存知な人も多いと思う。真っ赤な地に白抜きの文字。南船橋駅構内にも同じ名前の店がある。ただ、メニュー構成や写真を見ると、海浜幕張の「あずみ」や、西船橋の「彩花庵」と同じ(全部同じかどうかはわからないが・・・)のようだ。で、今回は店頭に大きく写真を掲示してある鴨そば。460円という立ち食いそばでは高級の部類。でも、一般的なそば屋だったら半額以下の料金で鴨そばが食べられるので魅力だ。
さっそく食べてみる。つゆは甘め。やや塩分控えめかなというくらいか。あまり特徴の無い味。もっと鴨の独特の旨みがスープに染み出しているといいのだが、完全に後のせだから仕方ないのか。茂野製麺の「鴨だし手折りそば」のつゆの旨みを知っていると非常に物足りない。麺は立ち食いそばであれば、普通っぽい。可も無く不可も無くといったところ。肉は、、、。
申し訳ないけれど、鴨肉についてはかなりがっかりした。ぼそぼそして脂っ気が無い。当然鴨独特の旨みはまったく無い。安い豚肉のほうがまだマシだ。うーむ、やはり460円だから無理なのだろうか。せめて5枚の肉を2枚に減らしてももっと旨い肉を使うべきだろう。あるいは、つゆそのものになにか鴨の旨みを出すエキスのようなものを入れてはどうだろうか。と、文句ばかり言って申し訳ない。そこまで立ち食いそば屋に要求してもしょうがない話だ。めんご。
新木場駅には地下鉄駅構内にもそば屋がある。そちらは湾岸そばとは系統が異なるようなので追ってまたリポートしたい。
峠のそば(三ノ輪交差点角) 映画通で食通のコピーライター、竹島さんと一緒に店に入った。下町のいい感じの立ち食いそば屋だ。店内は狭い。10人も入るときゅうきゅうになってしまいそう。独立店のようだが、ほかにも店舗があると竹島さんは言っていた。彼が絶賛する店なので間違いはなさそうだ。
カウンターには数種類の天ぷら。厨房には男性ひとり。壁に「当店は生そばを使っておりますので、ご注文を頂いてからゆでる時間2〜3分がかかります。」のような文章が書いてある。うーむ、期待できる。私も竹島さんもかき揚げそば390円を注文。
やはり少し待った。先客が1人いて食べ終わったところだったので、待ちは2〜3分と思ったけれど、5分以上かかった。でも、全然苦にならない。早速食べる。香りがいい。ちゃんとかつおで出汁をとっているからだと竹島さんは言う。確かに。つゆの味はやや辛めだがしっかりと出汁が効いている。そして麺は、つるつるしこしこ。まるで茂野製麺のキャッチフレーズのような感じだ。細めで、しなやかで玄そばのような色合い。ちゃんとそばの味がしている。間違いなく旨い。かなりグレードの高いそばに感激。
| | | | | 左: | 外観。右隣が地下鉄日比谷線の入り口になっている。 | | | | | | | 中: | 暖簾に加えて、立派な木製の看板もある。かっこいい。 | | | | | | | 右: | 三ノ輪は都電の発着駅(三ノ輪口駅)で有名。風情のある下町。 |
めとろ庵(東京メトロ東西線西船橋駅構内) 西船で乗り換えることが多いので、この「メトロ庵」は常々気になってはいた。でもなかなかタイミングがよくなくて、今回は初めて入る。外から想像すると完全な立ち食い方式だったが、椅子があった。セットものを食べるときには椅子があったほうが嬉しい。また、最近は若い女性も立ち食いそば店を利用しているので、やはり椅子の役目は重要だろう。
ちょうど昼時に行ったので、がっつりと、ミニカツ丼(+そば)セット(590円)を注文した。そばのつゆはやや色が薄めで味もやや甘め。私が昨今ハマっている立ち食いそばの研究(笑)を通して言えることは、は概ね昔に比べて味が薄くなってきた傾向にある。その流れなのだろう。塩分が少し控え目というのは非常に好ましく思っている。
麺はたぶん生そばを使っているような感じ。細めでなかなかいい。やや柔らかめのゆで加減だったものの、ざるそばで食べたらイケるのではないだろうか。更にポットにそば湯を用意してあるのはポイント高い。カツ丼は特筆するものは特に無い。可も無く。不可も無く。肉は柔らかだった。脂っ気が少なく、上旨い肉とは言いがたいが。
| | | | | 左: | 外観はこのようにガラス張りで明るい。ただ、外から食べているところが丸見えなので、ちょっと恥ずかしいか。 | | | | | | | 中: | 中央の薄いかまぼこが得した気分になれる。 | | | | | | | 右: | 玉子がもう少しジューシーだったら。また肉が・・・。欲を言えば切りがないが・・・。
でも、そこそこいいと思う。 |
松っちゃん・行徳店(東京メトロ東西線行徳駅沿い) 行徳に住んでいたことがあるので、よく立ち寄った店。そのときの店と現在の店の経営が同じかどうかは定かではない。だが、雰囲気は殆ど同じ。長いカウンタだけの店。最大25人くらいは横一列で食べられそうだ。厨房の中にはおばちゃんが二人。忙しそうに働いている。私が訪れたときもひっきりなしに動きまわっていた。先客は4人。注文は”ごぼう天そば”にした。390円。
想像していたのは細がきにしたごぼうで、かき揚げのようになっていると思ったが、割合太めで、水っぽいごぼうの天ぷらだ。量も多く、ごろりとした感触。柔かいのはいいけれど、ごぼう本来の味や香りがあまりないような気がする。つゆとの相性もあまりよくない。そばとは別個に食べる。
つゆは、このシリーズ(立ち食いそば紀行)で一番濃かった。いやはや、食べた後に思わずペットボトルのお茶を飲み干すほどだった。まあ、昔風といえばそういうことだ。かつての立ち食いそばはみんなこうだった。麺はこれまた一昔時代が違うんじゃないかというくらい柔らかく、ぷつんぷつん切れる。驚いた。太めで完璧なゆでめんを使っていると思う。
それでもみんな平然と食べているし、次々にお客さんも入ってくる。まずいと思ったらそれほど流行らないわけで、やはり好みの問題かもしれない。私もかつては同店によく行っていた。そのときにどんな味だったかはまったく記憶にない。でも、天丼は好きだった。それと、店の雰囲気、おばちゃんの笑顔。そういう意味では味よりも別の部分で支持したい店である。
六之助(小岩北口・徒歩2分)
午後7時半頃、帰宅のサラリーマンでごったがえす小岩北口。蔵前橋通りまでの短くも賑やかな商店街通りに面した同店は駅から近いこともあり、次々に来客がある。気になったのは「新そば」という張り紙。一般のそば店ならこの季節、割合当たり前であるが、立ち食いそば店にはまず貼られていない。それだけそばがちゃんとしているのだろうという期待が持てる。
中に入ると愛想の良いおばちゃんが迎えてくれた。もう一人のおばちゃん、そして奥でおそらく麺をゆでているおじちゃんもみんな暖っかそうな人たち。客席はほぼ埋まっている。天ぷらそば(350円)の食券を買ってカウンタの上に置く。私の前に4人が待っていた。ちゃんとした麺を使ってゆでるから、一人分つくるのにも少々時間がかかっているようだ。結局店に入ってから10分くらい待たされた。もちろんいい雰囲気の中だから待っているのが苦痛ではない。
まずはつゆをひと口。ふむふむ。やや薄口で出汁が効いていて美味しい。壁に、「当店は関西風のつゆです。」と書かれている。なるほど。でも、関西っぽくはないような気がする。さて、麺は・・・。これがまた旨い。ちゃんとしたそばだ。喉越しもよく、コシもある。風味もある。いやいや、また絶対に食べたくなる味だ。天ぷらはしんなりしているが、決してダメではない。いや、たまねぎの甘味がいい感じ。ごちそうさま!
尚、朝方(時刻不明)は天ぷらそばがなんと300円で食べられる。
| | | | | 左: | 郷土力士の栃錦の像がJR小岩駅にでんと構えている。 | | | | | | | 中: | 六之助の外観。すっきりとしている。大きな木の看板が目立つくらいで、質素だ。 | | | | | | | 右: | 目のはっきり出た木製のカウンタと広い厨房。 |
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2009/12/16
しばざ記 776 |
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