「俺たち2」管理人による戯言
日記でもない、コラムでもない、単なる戯言。そんな感じ。
筆者は幕張ベイタウン在住のおやじ。結構、歳いってます。はい。
しばざ記
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イルミネーションが輝く頃(その2・続き)
9年前のことだった・・・


父が自宅(私の木更津の実家)に帰ってきたのは深夜零時を回っていた。酒が好きで、外で飲むと、ついつい朝帰りになる父らしい帰宅だった。しかし、ここで寝られるのは今夜が最後だった。次の晩は棺に納められ、葬儀場で眠るのである。そして、その次の日の午前中には荼毘にふされるのである。

葬儀屋の係の人が手馴れたように、父を指定した床の間に運び、そして、北の方角を確かめて、そちらを枕にして、白いきらきらと艶やかな布団に寝かせた。よく酔っ払って茶の間で寝てしまうことがあっても不思議に床の間では寝たことが無かった。おそらく初めてのことだと思う。

葬儀屋が帰った後、母と私は父のそばに布団を敷き、横になった。灯明を絶やさないように、時々起きることにした。母と少し話しをした。明日は通夜でたいへんだから早く寝たほうがいい、と言われた。確かにその通りだ。寝なくてはならない。母と思い出話もしたい。しかし、思い浮かばなかった。

それにしても不思議なものだ。父と母とそして私が、おそらく私が幼稚園児の頃以来の川の字になって寝ている。こういうときになんだが、少し照れてしまった。おそらく父も照れくさいだろう。「早く寝ろ!」と父が叫んだような気がした。母は長い看病疲れが出て、いつの間にか寝息を立てていた。私も眠くなってきた。

翌朝、少し寝坊してしまった。母はとっくに起きていた。時々起きて新しいろうそくに取り替えていたようだ。私はすっかりその役目を果たすことなく、朝までぐっすり眠っていた。白い布を取り父の顔を見た。口が少し開いていた。笑っているようにも見えた。顔を触ってみた。だが、布団に仕込まれた大量のドライアイスで、物凄く冷たくなっていた。

準備を整えていると、親戚が集まってきた。近所の人もやってきた。葬儀屋さんが来る前に、母が父の顔を撫でていた。父母は昔の人間だから、いちゃいちゃしているところを見たことが無いが、それが最初で最後だった。ずっと長い間撫でていた。暫くして葬儀屋さんがやってきて、父を棺に入れた。棺を運ぶときには私も手伝った。

(たぶん続く)

2007/12/22
しばざ記 374

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